印西うんちく

印西市にデータセンターが多い理由とメリット・デメリット

千葉県印西市。都心から30km~40km圏内、成田空港から15km圏内のこの中途半端な土地に、20年以上前からデータセンターが集積しています。
一部メディアで名前が挙がっているものだけ挙げると
ゆうちょ銀行、みずほ銀行、東京三菱UFJ銀行、NTT、Amazon、Google、NECなど

地元民はそのデータセンターから町内に非常備蓄用品をもらったりもすることもあり、データセンターなんて秘密情報なんじゃないの?なんていうのは最近の話。
昔は地図にも堂々と「●●会社情報事務センター」などとオープンにされていました。

ところで、なぜ印西市にデータセンターが多いの?

と思われる方も多いかと思います。

「他にも良い土地あるでしょ?」
というご意見をもとに、なぜ印西が選ばれるのかを説明します。読んでいただける方はぜひ、
「印西なんかよりあそこ(うち)の方がずっと適してるでしょ!」
という目線で読み進めてもらえると面白いかもしれません。

印西市にデータセンターが多い理由

印西市にデータセンターが多い理由は簡単にまとめると以下になります。

都心も国際空港も近い
活断層が周辺にない
地盤が強い
海底ケーブルの陸揚げ局が近い
まとまった平坦な土地が確保できる

都心も国際空港も近い

千葉ニュータウン中央駅から浅草まで30分台、日本橋や新橋まで40分台、そして羽田空港と成田空港が直通。
成田空港までスカイアクセス線で3駅です。

いやいや北海道などの方が安全だし、安いし、環境的にも適しているのでは?

しかし、データセンターはそれなりに人の移動もあります。
特に東京一極集中の日本。
さらに印西市は外資系が多く、地方や海外から来るにしても国際空港成田と都心の間に位置しているというポジションはなかなか好条件です。

でもこの条件なら関東地方にもっと良いエリアがありますね。
そしてそもそもデータセンターの立地にはそれほど重要ではなさそうです。

「こんな中途半端なところより、都心にもっと近い便利なところや空港にもっと近い便利なところはたくさんありますよ。それに都心や成田空港の距離は関係ないですよね。」

活断層が周辺にない

地震の多い日本列島。
日本全国に活断層が張り巡っています。
首都圏では、さいたま市周辺~群馬県、栃木県北部、立川周辺~埼玉県西部周辺、神奈川県内陸部、三浦半島、南房総、長野県縦断、山梨県、伊豆半島など。

また、地震以外のリスクを言えば富士山の噴火など、活火山からの距離もあります。

「いやいや茨城県や千葉県は火山灰が蓄積して活断層発見されていないだけでは?」
という気もしますが、現時点で「確実にある」よりは「ない (かもしれない)」方が良いのでは。

地盤が強い

印西市は下総台地の上に乗っかっていて、地震に強いエリアという位置づけです。
東日本大震災では東京圏で成田市と並んで震度6弱を記録しました。
考えてみると震度6弱ならどの程度の感じか経験済みということになります。

「地盤が強いなら埼玉県西部の岩盤エリアや東京西部の武蔵野台地の方が強いですね。茨城南部や千葉県なんて地震ばっかりですよね?」

確かに。
都心や空港が近く、海外の人も地方の人も直通電車で行けるエリア・・・
では次の条件はどうでしょうか?

海底ケーブルの陸揚げ局が近い

海外からのネットワーク海底ケーブルは茨城県と千葉県の房総半島、北海道などでつながっています。

インフラを最適に利用できるためにはなるべくこのポイントに近い方が安く、安全であることが言えます。

海底から引き揚げて大切なケーブルを地下でえっちらおっちら都心を横断・・・なんて気が遠くなりますよね。

「なら南房総や茨城県でよくないですか?」

まとまった平坦な土地が確保できる

最後の条件です。
上記でいろいろ候補が上がったかと思いますので、特別適した街に当てはめてみてみましょう。

平坦な土地数万~10万平米以上でデータセンター作ります。その土地確保できますか?

おそらくはほとんどの地域はこれだけで候補から外れてしまうのではないかと思います。

Googleのデータセンターと同一区画の開発工区は16万平米の敷地の広さです。
これを全く起伏なく確保してください。もちろん起伏があっても整地すればよいのですが、作る方は整地不要な好条件を選ぶかと思います。

個人的に最後まで候補として残った千葉県内は意外と起伏が多く、平坦な場所が少ないです。埋立地や茨城県は地盤の問題があります。
八街市などの高台の平坦なエリアはかつて国際空港建設予定地の候補でしたが、八街市はわりと家屋が分散しているほか、道路のインフラ整備が弱点のため、まとまった土地を確保することが難しいです。

印西市はかつて飛行場の滑走路があった場所。
それだけまっすぐで平坦でそのまま使える土地があるのです。

不便な印西市?

「電車で直通はわかりました。でも高速IC遠いですよね?」

印西市の真ん中は北千葉道路が事業化されています。
また、最近では千葉北西連絡道路という高速道路も具体化されて、千葉県では珍しい十字型ジャンクションが計画されています。

既に立地している企業は先見の目を持って進出しています。

あと、印西市から例えば福岡に行く(荷物を運ぶ)場合、高速道路を使うのと成田から飛行機や貨物で行くのでは、どちらが便利で安いでしょうか?
「都心から名古屋まで車で6時間」「成田空港から沖縄まで3時間」です。
印西から成田空港は高速道路に料金はかかりません。

特に海外から見れば「都心から30分も40分も50分も同じ」感覚です。
1分に優越感を持つのは東京エリアならでは。

逆の立場になってもそうでしょう。
アナハイムのディズニーランドをロサンゼルスのディズニーと言っている感覚です。
アナハイムはロサンゼルス市でもロサンゼルス郡でもなくお隣のオレンジ郡です。
「アナハイムがあと10分近ければなぁ(切実)」とは思わないかと思います。

データセンターが多いメリット

ここからは専門的な視点から外れて、市民の感覚や体感で書きたいと思います。
おそらくそれ違うでしょ、という部分もあるかと思いますが、読み物のひとつとして流していただければたすかります。

停電に強そう
災害に強そう
税収が安定
街が静か
ブランドが確立する

停電に強い

東日本大震災の時、東京23区の一部でも行われていた計画停電。
あのとき印西市は一切停電がありませんでした。
なので停電の状況がよくわからないのですが、
理由としては
・コードブルーでおなじみの地域医療拠点病院「日本医科大千葉北総病院」がある
・データセンターが多い
という2つになるかと思います。

当時は千葉県・茨城県一部・埼玉県一部などをドクターヘリでカバーしていた日医大だけでなく、すでに大手都市銀行の電算事務センターがありました。

地下電力施設

印西市には地下シールド工法で電気ケーブルを通しています。
データセンターが集積することで電気関係のインフラがさらに強くなります。

よって大規模の停電に強い・・・気がします。

災害に強い

データセンターがあるくらいだから災害に強いんだよね。
ということです。

税収が安定

市の財政が潤っている印西市。
おかげさまで新型コロナ関係の補助金や支援金配布、物価高対策の支援金など、他地域より恵まれることが多かったかも。

データセンターを置くということはそれだけの体力のある会社が重要施設として位置しますので、そう簡単にはつぶれたり移動したりはしないです。

また、巨大なデータセンターの箱は、戸建てがいくつも並ぶよりも維持管理が楽です。

巨大なデータセンター1個の場合のインフラ維持費

道路2本敷いて水道管と電線1本あれば1つの巨大な施設は保てると仮定。

同じ広さの敷地に家屋やお店が建つ場合のインフラ維持費

10万平米に無数の住居やお店が立ち並んでいたら、それぞれ道路を細かく敷き、電線や水道管や電気の配線、電柱、街路樹もその数だけ必要になり、管理にもお金と手間がかかります。

街が静か

データセンターの代わりに物流施設だった場合、それだけ多くの大型トラックが行き交う街になります。その場合、それだけの道路インフラ整備が必要になります。

しかしデータセンターはまるで稼働しているのかさえわからないほど人も車も出入りしません。

ブランドが確立する

印西市って何があるの?という質問に、特にキラーワードが無かったのですが、
「データセンターがあるよ。」という何もキャッチーではないワードだけは言えます。

しかし2022年、大々的に報道された世界一のIT企業のおかげで、データセンターが集積することの意味がメディアによって広まりました。

なんとなく良いイメージかも、ぐらいにはなったのかなぁ。

大学があることがメリットで安い土地があるということで、昭和期には数多くの大学が東京の西部に誘致されました。
大学があることは直接のメリットでいえば、生徒が電車を使うことと、賃貸で住むことで街が活性化し、若者が増えることです。

データセンターはそのような肌で感じるメリットは少ないかもしれませんが、災害に強い街としてまわりまわって不動産に関わってくるかもしれませんね。
近くに東京大学がある街のように、近くにGoogleがある街、IT系の街。
そんな感じでイメージがつけば、少なくとも今までよりは違うのでは?

 

データセンターが多いデメリット

データセンターがあるとなんとなく悪いイメージになるものもあります。

データセンターの需要が強すぎる
電磁波の心配
無機質
世界情勢での脅威

データセンターの需要が強すぎる

土地があればデータセンター建設。
今の印西市はこの状況になりつつあります。
データセンターの供給は需要に追い付いていません。

「せっかくならショッピングセンターや大型店舗が良かった。」

2000年以前から生活していた私が見たら「なんて贅沢な悩みなんだ!」と思いますが、その気持ちはわかります。

おしゃれなビルが取り壊され、無機質なデータセンター箱が敷地一杯に建てられる。
愛着のあったショッピングモールの一部がデータセンターに変わる。
駅前がデータセンターだらけ。
里山を切り崩して動植物を追い出し、データセンター。

こんな未来はすぐそこです。

電磁波の心配

これは私個人で東京の有名大学工学系の方に聞いたのですが、
そもそも自分のパソコンを作動中の電子レンジの真横で稼働させたらインターネットはおろか、内部はどうなるか・・。

電磁波に弱い電子機器を扱うデータセンターは、人体に影響のある電磁波が外に放出されるだけのものだったらサーバーおかしくなりますね。
ということで、あぁそうか~、と納得してしまいました。

そもそも印西市のデータセンターの場合、外資系データセンターの多くは敷地が広く取られています。

電子レンジも数センチ離れるだけで電磁波の影響がかなり低くなります。

無機質

データセンターは窓がほとんど無い四角い箱が多いです。

イギリスの「Colt」やアメリカの「Google」、鹿黒南に着工したシンガポールの「STT GDC」はデザインがわりと近未来で格好が良いと感じていますし、敷地に植栽もあったりとデザイン性が豊かです。

しかし、排熱設備がむきだしだったり、わりと敷地いっぱいに建物を建てているデータセンターもあります。

データセンターは中身さえしっかりしていれば良いので、単なる無機質な箱で良いわけです。

そこで印西市は今後のデータセンター建設には一定の周辺との景観配慮をお願いするという方針を出しているそうです(議会質問より)。

世界情勢での脅威

データセンターはその国の機密情報やシステムが密集しています。

簡単に乱暴に言えば、銀行のデータセンターを破壊すればその銀行は死活問題になります。

昨今とりまく情勢で、もし戦争があったら、データセンターは狙われるのでしょうか?
優先順位は極めて低いと言えますが、サイバー攻撃としてはターゲットにされてもおかしくはありません。

印西にミサイルを飛ばすメリットは無いですが、「もしも」は想定しても良いのでは?
印西市には中央駅周辺に共同溝がありますし、シールドで掘った地下電気設備もあります。
せっかく地盤を売りにするなら、そうした地下空間の避難利用も考える時代なのかも知れませんね。

日本一のデータセンタータウン

千葉県印西市牧の台には、日本一のデータセンタータウンが生まれます。
大和ハウス工業株式会社のDPDC(ディープロジェクト・データセンター)プロジェクトです。

2025年までに14棟のデータセンターを建て、敷地面積約27万平米、総延床面積約33万平米の開発を進めています。

大和ハウスはこのほかにも牧の原駅北口、東の原など、北総線印西牧の原一帯を購入済み。
実際は何になるかは決まっていませんが、印西牧の原駅一帯が日本一のデータセンタータウンになる可能性もあります。(一帯の一部敷地は児童相談所の建設が決まっています。)

印西市にデータセンターは何社ある?

10年ほど前であれば「30社くらい」などと具体的な数字が言えました。

しかし昨今はショッピングモールのように建物ができて、その中に数々の会社がデータセンターを置くスタイルが多いようです。
もちろんその中身はヒミツのことが多いため、実数を把握することは困難です。
Googleや大手銀行のように自前でデータセンターを建てることは極めてまれです。

100社以上あるかもね。程度でとらえても良いかと思います。

今後も印西市にデータセンターが増え続けます。