印西の防災・防犯

印西市木下・小林・布佐・栄町付近の利根川の氾濫危険度と増水のチェック方法

2019年10月12日の台風19号で少なからずも被害に遭われた方の早い回復を祈ります。

私は印西市の防災関連メンバーの片隅にでも名前が載っているため、下手なことは書けないのですが、今回私のもとに回ってきた写真や情報をもとに今後のみなさんの役に立てるよう、記録を残しておきたいと思います。

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記事更新2023年5月8日。
記事公開2019年9月10日。
あくまで個人的な記事となります。公式ではありません。
インターネットの情報の一部ですので、参考程度にお願いします。
印西市木下、小林と我孫子市布佐・栄町の利根川を中心としているため、その他の河川に対しての被害については触れておりません。いろいろ複雑な思いはありますが、今後この地域の方が参考にできる記録として残すことを目的としています。

まずはじめに、利根川流域に住む方々へ

★印西市域の利根川は市内周辺の雨ではなく、山間部の「長雨」に注意。→避難猶予は約1日間。
★印西市内低地市街地は地下水路が巡っていて排水は良い。(道路冠水は高台やニュータウン地域より少ない)
★利根川の氾濫・決壊は過去1947年の埼玉県が最後。
★過去の印西市内の水害は手賀沼の越水が原因。
★手賀沼の排水機場が設置されて以降75年以上水害は無し。
★2023年以降、排水機場性能を更新予定。

※現在のように治水の整っていない江戸時代などの情報は割愛しています。

事実を知ることが大事

2019年10月の台風19号。
印西市内では雨が少なかったのですが、山からの大量の雨水が1日遅れで利根川を流れ、利根川沿いでは不安でいっぱいだった人も多かったと思います。
木下駅圏や小林駅圏、布佐駅圏は歩いて数分も行けば高台になりますので、避難に対してもどのタイミングが良いのか悩んだ方も多いかもしれません。

中にはフェイク情報も流れていたようで、「~~らしいよ。」といった悪気のない、責任も被らない、そして根拠のない情報が錯そうしていたようです。

そこで、その沿線に住む人たちがいざという時のためにしっかりとした知識を持っていれば冷静に物事を判断できると思い、いんざいパルケで持っている知識を書き記したいと思います。

まずはじめに、私自身もとにかく下記の点に注意したいと思います。
これは利根川沿いに住む方だけではなく、この危機とは無縁だと感じている地域に住む方にも今後注意が必要です。

避難レベルを知る

警戒レベル1:注意と心構え
警戒レベル2:避難行動の確認
警戒レベル3:高齢者・乳幼児などと関わる人の避難
警戒レベル4:全員避難
警戒レベル5:すでに災害が起きている

噂やツイッターに気をつける

結果的に幸運にも利根川では決壊、越水、氾濫した地域はありませんでしたが、実際にはそれ相応の情報が口コミやSNSを通じて広がっていたようです。

伝言ゲームのように広がる噂

※下記は例です。実際に聞いて見たものではありません。
Aさん「もうすぐ氾濫しそう」
→Bさん「もう氾濫しそう」
→Cさん「(脳内変換で時間が経ったから)もう氾濫していると思うよ」
→Dさん「もう氾濫したらしい」
というように、言葉ひとつではじめの発信者の意識と伝わる内容にかなりのイメージの違いがあるかと思います。

Cさんの時点まではまだ推測の言葉なのですが、
Dさんで過去形の断定の噂話となっています。
DさんはCさんの話を聞いてそう推測するのは仕方が無いし、Cさんも個人的な感想をもとに発言したまで。どこにも責任の所在がありません。

発信する側はさまざまありますが、善意で行っている場合も多く、こういった例は災害時に決してなくなることではありません。

問題は受け取る側です。
日ごろからそこに住むリスクと恩恵を意識しながら、いざというときの対処法や冷静な判断をシミュレーションしておくことが大切かと思います。

利根川と印西市域の利根川を知ろう

利根川とは日本一の流域面積を誇る川です。
この利根川は群馬県などの山間部からスタートし、数多くの大小の河川と合流して銚子から海へ流れます。

利根川水系の河川名 (外部リンク)

利根川水系だけでも数えきれないほどの数の河川があります。私も見て驚きました。これだけの水を最後は1本で海に放出していると思うと、なかなかのものです。
銚子へ行ったことのある方は想像ができるかと思いますが、河口は海のような広さです。

印西市域の立ち位置

印西市の利根川流域は直前に中規模の小貝川、大規模の鬼怒川、渡良瀬川を集めています。
鬼怒川や渡良瀬川は関東に昔から住んでいる方は一度は聞いたことがあるかと思います。
さらに木下では手賀沼に溜まった水を強制的に排出する機能を持つ手賀排水機場があり、手賀沼の水も集めます。
考えただけでもすごい量。今回あの大量の水に耐えた堤防を作った方々に感謝です。

野田市の関宿地区には江戸川との分岐があります。
埼玉県東部 (春日部市周辺) には首都圏外郭放水路が作られました。これは中小の河川の水を地下に流し、江戸川へ放流する機能があります。

利根川の川幅

広いですよね。写真の右の白い点は車です。
参考までに千葉ニュータウン中央駅周辺の一番広い国道464号線歩道から歩道までの掘割部分が約120mです。

利根川印西市の付近

木下付近の川幅

約800m前後 (堤防の端から端まで)

布佐付近の川幅

約380m前後 (堤防の端から端まで)

栄町付近の川幅

約1,300m前後 (長門川水門付近)

利根川の堤防の高さ

木下・布佐付近:おおよそ11m~12m前後

堤防の構造

主に盛り土+コンクリート+各所に水門

さすがに日本最大の利根川ということもあって、盛り土だけではなく、コンクリートによる補強された堤防が作られています。栄町付近にはより決壊しにくいスーパー堤防が作られています。

木下付近の特徴

布佐の栄橋付近は川幅が一番狭いですが、堤防の高さがあります。
木下付近は川が複数集まり、カーブを描いているためか、河川敷を広めにとられています。
木下から土手に上がると、川岸までかなりの距離があります。そして多くが川岸の淵の淵までコンクリートで囲まれています。
または水流の勢いを弱めるテトラポットがたくさん置いてあります。

利根川印西市の付近

このカーブのおかげで船が停泊しやすかったとも考えられます。
以前は内陸に船の停泊できる人工川があったそうです。この人工川が無くなり、代わりに強度のある堤防が作られました。

堤防の作りは段々になっていて、水の量がどのくらいでアウトなのか専門の方ならわかるのかもしれませんね。布川は今回、あの水量でもずっと水準内のグレーのままでした。

川の水量のチェック方法

場所

木下・布佐に一番近いのは「布川」になります。
栄町では「須賀」になります。
公式では印西は小貝川との合流地点「押付」となっている場合もありますが、リアルタイムだと布川の方が近いです。
布川とは対岸の利根町の河川付近一帯を指します。布川もかつて宿場として栄えた街です。

水量がチェックできるサイト

手軽なものでは主に下記2つを見てみるのが簡単です。
ただし一方だけの情報での判断だと、思わぬ心理バイアスが働いてしまいますので、必ず2つを見てその「今の水位」「少し上流の状態」「増減の早さ」・「上流の天気」を含めて考えます。

ヤフー水位情報

台風による利根川の木下布佐付近の増水

1. 利根川をクリックし、布川をクリックすると現在の水量(メートル)と状態を見ることができます。
2. 地図を拡大して木下定点カメラマークをクリックすると、木下付近の川の状態を定点カメラで見ることができます。高さの感覚がわからないので、当時はこれを見てかなり方が驚いたのではないでしょうか。写真だけだと高さの感覚がわかりません。

Yahoo!水位情報

国土交通省

台風による利根川の木下布佐付近の増水

断面図とどれくらいの水量が増えているか減っているかが一目でわかります。
住宅地の高さと堤防や水の高さも断面図でわかります。
布佐付近にも定点カメラがあります。今回、栄橋がこれだけの水量に耐えたことは称賛したいですね。堤防も橋も作った方はすごい。

国土交通省水位観測所 (布川)

2019年10月13日の状況

水位は私が確認したところでは最高8.6mほどまで上がっていました。

今回ずっとチェックしていましたが、布川の危険水位はどのくらいなのかな。
取手・押付・須賀は黄色。赤いマークの氾濫危機まではいっていません。
上限を知りたいですね。

→ 危険水位は8.7m以上のようです。(2020年9月確認)

佐原の手前、茨城県稲敷市「横利根」で氾濫危険のアラームが鳴りましたが、その後さらに上昇するも堤防を越えることも決壊することもなく安定。無事に平常ラインに向かっています。良かった!安心!

これは記録でしかありませんが、今回は8.6mのところでも避難準備(警戒レベル3相当)でした。
しかし、水位上昇速度とかいろいろ掛け合わせてみないと一概に危険度はわかりませんので、数字だけで判断しないようにしましょう。

2019年10月13日の午後14時頃の写真

私が防災関係の立場に足を突っ込んでいるので、許可をもらって掲載します。
写真は関係者の方から速報で送っていただきました。

台風による利根川の木下布佐付近の増水

ちょっと!これを見てびっくりした人は多いはず。定点カメラもこんな感じでした。
もう溢れそうじゃない?でも冷静に。

利根川の木下付近は段々になってる作りで、ここまで来たら危険というのがわかりやすいのでしょうか。

台風による利根川の木下布佐付近の増水

あれ?こっちはまだキャパがありそう。
同じ時刻に撮影された2枚の写真でもかなりの高さの違いを感じますよね。

実際この辺りは川幅が広いので、1メートルでもかなりの水の量を受け入れることになります。

避難準備発令とその時

記録ですが、最終的に印西市は避難準備 (警戒レベル3) までの警報でした。
避難準備とは、高齢者など非難に時間を要する方の避難開始です。一般の方はいつでも避難できる体制にしておくことです。(あくまで避難レベルでの話です。)

この時、消防団・水防団をはじめ自衛隊、有志も集まり、不測の事態に備え待機しています。
もし「決壊しそう」という前兆があればすぐに対応し、同時に避難勧告も出されるそうです。

増水の特徴

木下付近は普段から天候が安定しているため、利根川だけが雨による増水で氾濫ということはなかなか考えにくいです。
また、印西市内利根川流域は地下水路などがあり、排水機能もそれなりに整備されているため千葉県内で雨が降ってもすぐに流れてしまいます。

注意は群馬県・栃木県周辺の長雨の1日後

問題は今回のように山間部での長雨によるものです。
この辺りが上流と違うのは、川の増水までだいぶ猶予があるということですね。
事前に上流の状態がわかり、いくつものチェック部分を見ながら、到着を予測できることです。
その時間は群馬県などで流れた大量の水が到着するまで、おおよそ半日~1日以上かかります。

木下・大森の水害の歴史と意外な原因

利根川の決壊と木下・大森周辺の水害の歴史

1938年 台風と梅雨による大雨で大森中ノ口地区・木下地区約200戸が浸水。水は50日ほどとどまる。浸水水位は最大5.45m。
(原因:手賀沼)
1941年 台風と梅雨による大雨で手賀沼の堤防が決壊。大森地区約50戸浸水。浸水水位は最大5.25m。
(原因:手賀沼)
1947年 埼玉県内で利根川が決壊。以降約50年以上、利根川の堤防の決壊はありません。
1948年 8月の大雨で手賀沼の水があふれる(内水)。浦部の水田が冠水。
(原因:手賀沼)
1956年 手賀排水機場完成。排水性能は40㎥/秒。
1968年 手賀沼干拓事業完了。
1969年 手賀沼の埋め立て工事完了。
2000年 北千葉導水路完成。我孫子市布佐にある第一機場の排水能力は80㎥/秒。

木下地区の水害の歴史は、昭和13年と昭和16年に最高水位約5mという水害に見舞われた記録があります。木下・大森地区では昭和初期頃を最後に大きな水害はないようです。

時代も昔、かつては利根川が原因の時代もありましたが、その多くは佐原などに記録が残っています。
最も最近では約50年以上前の埼玉県内の利根川堤防決壊にさかのぼります。

大森・木下周辺の水害、昭和の大水の原因はなんと手賀沼
手賀沼は流れのない沼ですので行き場がなく、ただ溢れるという事態。これが内水といわれる一例です。そんな手賀沼に流れ込む川があります。柏市の大津川や大堀川です。さらに増水すれば低地は少しずつ冠水します。

大規模治水工事

その後昭和30年ころまでに手賀沼の大規模改良がおこなわれたそう。
現在は巨大なスクリューなどで強制的に水を流す手賀排水機場が稼働し、その後の手賀沼の増水による水害はありません。
今回の手賀沼周辺の水位もタイミングよく排水してくれたようですね。

印旛沼にも古くに水害の記録がありますが、人工的な対策によって水害はほとんどなくなりました。

人は水の恩恵を受けて文明や文化がはじまっていますし、いくら高台が安全とは言え、生活するうえでは誰かが水と関わることをしなければ生活が成り立ちません。

このように災害と時代を乗り越えて、利根川だけでなく多くの河川が治水改善されていますが、それでも利根川のような設備をあらゆる河川に設置することは現実的に不可能です。

そのためには、住む人も関わる人も起こるべくして起こることを想定した準備が必要だと改めて感じました。

わざと浸水させるエリアを知ろう

利根川周辺には、水害から街を守るためにわざと水を流し浸水させるエリアがあります。
有名なのは柏市の田中調整池周辺。
知らない人は、水害だ~と思ってTwitter上にその情報があふれていましたが、あれは意図的です。
手賀沼周辺の広大な水田地帯。
ここもおおむね浸水してしまうのですが、家屋は軒を高くしていることにも注目です。

昔から人が住んでいる地域は歴史から街を作り上げているのですね。

ハザードマップ

利根川沿いの方はハザードマップを参照しましょう。市から配られている冊子にも載っています。

木下駅エリア・小林駅エリアともに数分歩くと安全な位置になります。どの方向に向かえば良いのかルートを確認しておくと安心かもしれませんね。

木下

例えば木下地区なら、木下小学校以東や総合福祉センター、竹袋方面。木下東も平岡の高台まですぐです。

大森

大森地区なら国道356号線を越えれば一気に海抜が上がります。
ハザードマップ上は印西市役所も安全圏ですが、大森ふれあい会館などは市街地の2倍近く高くなります。指定避難所は印西中学校のみです。

小林

小林地区なら、JR成田線を超えれば一気に高台へ登ります。北側の住宅地でも陸橋がありますのでこちらからすぐに高台へ避難することが可能です。
小林駅が最寄り駅の栄町の方は町の防災ガイドラインを確認してみてください。

布佐

成田線沿線の我孫子市域は基本的に住宅地が高台にあります。かつて栄えた布佐の宿場町も数分行くと高台です。

安食

安食周辺の住宅は高台が多いですし、利根川から距離があります。どちらかといえば長門川の氾濫に注意かもしれません。

避難する前に

戸建てが多いエリアですが、猶予があるからこそ大切なものを家の上の階に集めておくとよいと思います。
もし千葉ニュータウンが大丈夫なら買えるものはそちらで買えます。欲張らずに優先順位をつけて集めて安全な場所に置いておきましょう。
木下地区ではアパートやマンションは少しかさ上げして作られているところも多いようですが、1階の方はなるべく早めに持ち出すか、事前に郵送で親類などの家に送るなどがおすすめです。

避難する時に持参する物

こちらも優先順位を決めますが、持ち物は2通りのパターンに分かれるかと思います。

がっつり快適に生活できるスタイル
バックパッカーとりあえず最小限スタイル

千葉ニュータウンエリアが通常通りなら、食料はそこでも買えます。木下・小林地区から千葉ニュータウンなら歩いて行くこともできますし、移動手段はその場でもなんとか協力し合えるかと思います。

身軽で行く時

昼間はニュータウンで過ごすとか、頻繁に出入りするならリュック一つの方が身軽で、持ち物管理も心配無用です。ただし夜は最小限の寝具などで過ごすために、そのリスクはあります。

がっつり行く時

持ち物が多ければ避難生活が快適ですが、移動が大変だし、持ち物管理にも気を遣います。

印西はもちろん千葉県広範囲にマヒしている場合なら割り切れますが、こればかりは状況によりけりで難しいですよね。

家にいる場合

数十センチの冠水でも足をとられますので、外に出て避難しようとせず、縦の避難がおすすめです。家の上の階に避難。マンションの1階などの場合は、早めに避難。

避難場所

避難場所はその時の状況による可能性がありますので、ここでは書きません。

現在木下にあったデキシーの跡地に何が建つかわかりませんが、東京のようにびっしりビルが建っているわけではないので、今後区画整理開発する場合は土地のかさ上げができないものでしょうか?
2m~3mでもあがるだけでかなり違うと思います。

→ 2023年数十cm~1mほど盛り土されたようです。

 

今回多くの方が目の当たりにしたように、どんなに国のバックアップで作られた強固な堤防も、広い河川敷も、キャパシティーのある川でも、その想定をはるかに上回る雨が一部で長い時間降り続けると、「大丈夫よ」とは言えなくなってくるのですね。

幸運にも利根川では氾濫も決壊もありませんでしたが、今後100年何があるかはわかりません。また、それはどの地域にも起こりうることだとも言えます。

広い平地ではアメリカで起こるような大きな竜巻が発生するかもしれませんし、同じ場所で局地的に何日も雨が降るかもしれません。そのため地盤が緩み台地が崩れることもあります。
今大丈夫だと思っている場所でも何があるかわかりません。昔から人は自然とうまく向き合って豊かさを作り上げてきました。
私も水辺が大好き。その土地のリスクとその土地の良さを上手に認識しながら、自然と向き合っていきたいです。

そして今回台風の被害で亡くなられた方のご冥福をお祈りします。被害に遭われた方、家や作物が大変な事になった方も多いかと思います。みなさんの笑顔が1日でも早く戻りますように。

最後に、災害を防ぐために働いていたみなさん、不眠不休で待機していた水防団のみなさん、自衛隊のみなさん、市に関わるみなさん、医療関係者のみなさん、積極的に情報発信してくれたみなさん、私の知らないところで動いていたみなさん、本当にお疲れさまでした。そしてありがとうございました。